猫になんてなれないけれど
(・・・あっ)


「そうだ、ギャップです」

「・・・は?」

「冨士原さん、固いイメージは確かにあるんですけれど・・・唐突に、猫の話とか真面目にするから。それが、うまく言えないけど・・・ギャップがあっておもしろいんです」

「・・・」

冨士原さんは、難しそうな顔で眉間にシワを寄せている。

それのどこがおもしろいのか、と、悩んでいるのかもしれない。

「・・・よく、わからないけど」

考えるように呟いてから、冨士原さんは小さく笑った。

少しだけ、いたずらっぽい表情で。

「真木野さんがおもしろがってくれるなら、まあ・・・いいってことにしておきます」

そう言った後、微笑んだ彼と目が合った。

また、私の頬が勝手に熱くなっていく。

「多分、真木野さんのパジャマと同じです」

「え。・・・パジャマ」

「うん。パジャマというか・・・寝起き姿を気にしてたので。けど、オレは好きだって」

「あ、ああ・・・」

改めて、寝起き姿が好きだと言われ、どうしようもなく恥ずかしいような気持ちになった。

冨士原さんの言う通り、自分では、良さが全くわからない。

「・・・まあ、オレから見たら、真木野さんも欠点なんてないですよ」

思考が一旦停止した。

だって、嘘みたいなことを真面目に言うから。

「もしかしたら、自分では色々と気にしてるのかもしれないけど。そういう・・・悩んでいるところも全部含めて、真木野さんは綺麗だし・・・オレは、かわいいと思いますよ」

「!」

さっきまでは、真面目な顔をしてたのに。

「かわいい」って言った後、照れたような顔で目をそらすから。私はしばらく、胸の震えが止まらなかった。


戸惑いとか、恥ずかしさとか。信じられないって気持ちもあるけれど。

それでもやっぱり、言われた言葉は嬉しくて。

彼の態度にどうしても、胸は、甘く震えてしまうんだ。

だからこのまま。

胸の震えを感じたままで、私は、冨士原さんがくれた言葉を素直に受け取ることにした。







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