猫になんてなれないけれど
「・・・」


(よ・・・よし!洗濯!洗濯しよう!!)


寂しい気持ちにならないように。恐怖に捕らわれることのないように。

とにかく動いて、余計なことは考えないようにしておこう。

うん、そうだ、そうしよう、と、荷物を置くと、早速家事に取りかかる。

洗濯をして、掃除機かけて。

トイレ掃除とお風呂も洗って。

気分転換に髪でも巻いて、服もついでに着替えよう。

夕飯は、凝ったものでも作ろうか。確か豚肉が残っていたから、野菜を巻いてソースをかけて・・・。

一心不乱に洗濯、掃除、料理を済ませ、パソコンを立ち上げてお気に入りの動画を見ながら夕飯にする。

このまま、あっという間に時間が過ぎて。お風呂に入って眠りに就いて。

朝になったら仕事に行って。そうしたら、怖さや不安を感じる暇もないはずで。


(明日は月曜日だし・・・クリニックは朝からきっと混むもんね)


忙しいと思うから、夜までバタバタ仕事して。買い物をして、それでまた家に帰って。

・・・帰って・・・・・・。


(・・・また、一人になる時間がくるんだ・・・)


当然のことに気がついた。

これから毎日、こんな気持ちになるんだろうか。

考え出すと、今までにないくらいの不安が私に押し寄せて、心に暗い影が差す。


(・・・・・・冨士原さん・・・)


「もっと甘えていいよ」って、「すぐに連絡してください」と、言ってくれた彼の言葉を思い出す。

本棚の上の時計を見ると、19:30を表示していた。

まだ、仕事をしているだろうか。

連絡をしたい気持ちはあるけど、やっぱり、仕事中だと思うと気軽にできることじゃない。


(連絡したら、『なるべく早くここに来る』って約束もしてくれたから。仕事を切り上げて来てくれそうな気がするし・・・)
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