猫になんてなれないけれど
ーーーどのくらい、あのまま泣いていたんだろうか。

涙が途切れて落ち着くと、私は、冨士原さんと一緒にリビングへと移動した。

ローテーブルの角を挟んで、隣り合って2人で座る。

気持ちの静まりを確認してから、彼は私に問いかけた。

「・・・それで・・・どうしたんですか」

「・・・」

顔を見るなり泣き出すなんて、冨士原さんも相当びっくりしただろう。

素直に話をするのは恥ずかしいけど、きちんと伝えることにする。

「・・・・・・その・・・安心、したんです」

「え?」

「冨士原さんが来てくれて、すごく、安心したんです。そうしたら・・・なんだか急に、泣けてきて」

家の中だし、大丈夫だって思ったけれど、冨士原さんが帰った後に、一人になったら突然不安になったこと。

家事をしたり動画を見たり、気を紛らわしてはいたけれど、不意に昨夜のことを思い出し、怖くて、心細くて、どうしようもなくなったこと・・・。

経緯を彼に話していると、不安が再び湧き上がり、また、泣きそうな気持ちになってくる。

「・・・そっか・・・」

頷いて、冨士原さんは私の頭を優しく撫でた。

涙腺がさらに緩んだけれど、唇を結んで我慢する。

「・・・いいのに。いつでも連絡くれて」

「・・・・・・はい・・・」

「でも、よくがんばった」

頭をポンポンしてもらい、やっぱり涙は流れてしまった。

安心したのはもちろんだけど、「がんばった」ってひと言が、今の私の心には、大きく響いたようだった。
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