猫になんてなれないけれど
「今日は、よく泣きますね」

「・・・、すみません」

「あ、いや・・・いいんです。落ち着くまで泣いてもらえば」

そう言うと、冨士原さんは私の身体を抱き寄せた。

途端に、彼のシャツに涙の跡がにじんでく。

・・・さっきもこうしてもらってた。

今日の私は泣いてばかりで、そして、甘えてばかりになっていた。



私の涙が引いた頃、彼は、昨日の件で少し話してもいいかと聞いてきた。

昨晩の、ストーカー男性に関する話。

聞きたくないかもしれないけれど、今よりも不安が減ると思うから、と、彼に言われて頷いた。

また思い出すのは怖いけど、冨士原さんがそう言うのなら、聞いておこうと思った。

「・・・じゃあ、まず写真のことを。男のスマホに、真木野さんの姿が映っていましたが・・・あれ以外にも、やはり写真はありました。ですが、全て削除しています。自宅にあるパソコン等はこれから調べていきますが、私が責任を持って処理しますのでご安心を。何かあれば、即座に削除をしますので」

「・・・はい・・・」


(やっぱり、あれ以外にもあったんだ・・・)


予想はしていたことだけど、やはり恐怖を感じてしまう。

知らぬ間に写真を撮られていたことも、その間、そばにいて見られていたということも・・・。

けれど、他の誰でもない冨士原さんが全て調べて処理してくれると言うのなら、ひとまず安心しようと思う。
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