猫になんてなれないけれど
「あら?お知り合い?」

私たちの様子を見た受付の女性が、私と冨士原さんを交互に見やる。答えていいのか悩んだ私は、冨士原さんに視線を送った。

「・・・以前、仕事で。少し」

冨士原さんは、言葉を選ぶようにそう言った。こんなところで会うなんて、気まずい気持ちはお互い同じだろうと思う。

「あら、そうなのね~。偶然ですね。世の中狭いわあ」

それ以上深く追求することはなく、「うふふ」と笑って、受付の女性はこの場を離れた。

代わりに、スタッフの女の子が現れて、冨士原さんに椅子を勧め、エントリーシートの説明をはじめた。


(・・・びっくりした・・・。なんで?冨士原さん、こんなパーティに参加したりしなくても、普通にモテると思うのに)


もしかして、何かの潜入捜査とか?

そうだとしたら、エントリーシートに職業を偽って書くかもしれない。冨士原さんと話すまで、下手なことを言わないように気をつけておこう・・・。

そんなことを考えながら、チラリと冨士原さんに視線を向けた。すると、私以外の女性陣も、彼のことをチラチラ見ていた。


(・・・まあ、かっこいいもんね・・・)


他の参加者の男性が、かっこ悪いわけじゃない。むしろ、なかなか素敵な男性もいる。

けれど、冨士原さんはちょっと群を抜いていた。背は高いし綺麗な顔をしているし、特に、知的イケメン好きの女性には、まさにドンピシャのタイプだと思う。


(私のタイプではないけどね)


やっぱり、優しくて笑顔が素敵な人がいい。

冨士原さんは、礼儀正しいし意地悪なわけではないけれど、やっぱりクールな感じだし、今のところ、笑顔は一度も見たことがない。


(だけど、よりによってなんで今日のパーティに?動物好きが対象だよ?やっぱり捜査?まさか、動物好きには見えないもんね・・・)


窺うように、冨士原さんに目を向けた。すると、こちらを向いた冨士原さんと目が合って、私は慌ててうつむいた。





< 18 / 169 >

この作品をシェア

pagetop