猫になんてなれないけれど
突然問われ、私は「へ?」と反応してしまう。冨士原さんのシートを見ると、「猫派」と記載してあった。

「えっ、冨士原さん、猫派ですか!?」

そういえば、今日のパーティは「動物好き」が条件だ。真面目に婚活しているならば、エントリーシートに嘘はなく、冨士原さんは動物好きで、猫派ということになる。


(み、見えない・・・)


驚いている私を見た冨士原さんは、ちょっとムッとした顔になっている。

「・・・意外ですか」

「あっ、ごめんなさい。どちらかというと、犬派かなって思ったので」

そう。

動物が好きというのもそもそも意外だったけど、そうだとしたら、絶対に犬派だろうと考えた。

それも、トイプードルとかポメラニアンとかフワフワかわいい系ではなくて、ドーベルマンとかラブラドールとか、賢くて、かっこいい感じの犬種だろうと。


(それで、忠実な子になるように、厳しくしつけをしたりして・・・)


なんて、ここまでは言えないけれど。

「猫派です。今は飼っていませんが、実家には2匹いるので」

「そうなんですか・・・」

やっぱり意外。なんとなくの猫派じゃなくて、本当に猫が好きらしい。

だけど、冨士原さんが猫を愛でてる姿なんて、全く想像できないな・・・。

「真木野さんは、犬を飼ってるんですか」

「いえ。私も、今は一人暮らしで飼っていませんが、実家でラブラドールを飼っていて」

「ラブラドール・・・」

冨士原さんが、悩むような顔をした。犬種がわからないのかな、と思ったけれど、そういうわけではなかったようだ。

「ずいぶん、大きな犬を飼ってるんですね」

「え?あ、はい。かわいいですよ」

「かわいい・・・」

眉間にシワをギュッと寄せ、難しそうな顔をされた。

猫派には、あのかわいさが理解できないのだろうかと、今度は私がムッとする。
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