猫になんてなれないけれど
(うわー!なんで?私、こういう場所では意外とモテるの?)


身長が165cmと女子にしては高めだし、ヒールの靴を履いているから、今日は170cm近いと思う。

柔らかく見えるようなヘアメイクにはしてきたけれど、そもそもが勝ち気な顔をしているし、男性受けがいいタイプじゃないことは自覚している。


(年齢?職業?トークタイムでいいって思ってもらえたのかな・・・)


とりあえず、嬉しいことには変わりない。ありがたい気持ちで会話を始めたのだけど、途中から、「あれ?」と思う会話の流れに。

「僕は、優しすぎるって言われるんです。なんでも女の子の言う通りにしてしまうので、振り回されることが多いというか・・・。ですが、しっかり引っ張っていってくれる、真木野さんのようなお姉さんタイプは、安心できるので好みです」

「は、はあ・・・」


(優柔不断で、頼りないということですね・・・)


「いや、ほんと、自立されている感じでいいですよね。俺は、できればギタリストの夢を追いかけたいので。将来養ってくれる、稼げる女性がいいなと思って」

「えっ」


(ま、まさかのヒモ候補!)


「うちは、両親がもう高齢で。病院通いが続いているので、お嫁さんが看護師さんなら、全部任せられるなと思って」

「はっ?」


(それはまさか、最初から介護要員目当てですか!?)


「・・・」

モテて喜んだのもつかの間だった。こちらから「ごめんなさい」という気持ちになった。

けれどこういうパーティは初参加だし、ここで断っていいのかわからない。

とりあえず、「ちょっとトイレに」と声をかけ、一旦この場を離れることにした。


(疲れた・・・。どっと疲れた・・・。あー・・・やっぱり、初めての参加でそうそう上手くはいかないか・・・)


トイレに入り、鏡の中の自分に語りかけながら大きくため息をつく。

第一印象がよくなるようにと頑張ってきたヘアメイク。それが功を成したのか、肩書きの効果もあるようだけど、妙な方向でモテてしまった。なんともいえない複雑な気持ち。
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