猫になんてなれないけれど
振り向くと、三村さんが困ったように立っていた。

「すごい声がしたから来てみたの。今田さん、既婚者だったのね~。たまに紛れ込むのよねえ、そういう輩。うちも、もっと厳しく参加者審査しなくちゃだわねえ」

三村さんは、「ふう」と大きく息を吐く。

そして私に向き直り、「残念だったわねえ」と神妙な顔で呟くと、肩をポンポンたたかれた。

「まあ、気を落とさずに。他の男性はみんないい方ですからね。さ、中に戻って、残りの時間を有効に。楽しんでくださいね」

「は、はあ・・・」

楽しめるメンタルはほとんどゼロに近いけど。三村さんに一生懸命励まされ、バンケットホールに戻って行った。

今田さんの奥さんの怒号は、バンケットホールの中まで響き渡っていたようで、今田さん狙いだった女性達は、皆、怒ったり肩を落としたりして騒然となっていた。

けれど、しばらくすると立ち直り、違う男性たちに目を向けて、新たな行動に移り始めた。


(・・・私は・・・)


先ほど話していた3人の男性たちと、また話をするのは気が重い。

だからといって、他の男性たちと話をする気にもなれない。

とりあえずオレンジジュースを手に取って、「気分が悪いのですみません」とスタッフの女性に声をかけ、目立たない場所に一人で座っていることにした。


(あーあ・・・。やっぱり、男の人はみんな浮気しちゃう生き物なのかな)


祥悟だって。

その前に付き合っていた人も、学生時代の元彼も、みんながみんな、そういえば浮気をしていた。そして私は結局いつも選ばれず、フラれてしまう側だった。


(・・・もしかして、私に原因があるのかな)


確かに私は、素直に甘えることは苦手だし、弟がいるからか彼氏にもついつい色々言っちゃうし、女の子らしい可愛さというのはないかもしれない。

だけど、だからって・・・みんながみんな、浮気しなくてもいいじゃんか・・・。

今田さんと会って話して、今日は来てよかったなって、嬉しく思っていたけれど。立て続けに男性不信に陥って、私はすっかり心が荒んだ。


(やっぱり、もう恋愛なんていいかもしれない・・・。そうだよ。・・・うん、そうだ!別に、私には仕事だってあるんだし、一人でだって全然生きていけるしね!!!)


やさぐれ気分で、オレンジジュースを一気にグイッと飲み干した。

そうだ、恋愛なんてしなくても、死にはしないし私は別に大丈夫。

自活できる力はあるし、また裏切られて傷ついて、心がボロボロになるならば、一人でいる方がずっといい。


そうこうしているうちにフリータイムを終了する声がかかって、告白タイムの時間になった。

ここまでの時間が、やけに私には長かった・・・。

「はい!ではみなさーん、お目当ての方とはちゃんとお話できましたか?できなかった方は一発勝負!告白タイムの時間ですよ~!」
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