猫になんてなれないけれど
三村さんの声かけに、みんながそわそわ動き出す。

告白タイムといっても、テレビ番組などで見かけるような、男性が女性の元に告白しに行くシステムではなく、参加者それぞれが意中の人の名前を書いた紙を投票し、両思いになっているカップルをスタッフが発表するという形式だった。

「はい!みなさん意中の方はちゃんと心に決めましたか?書いたらこの箱の中へ入れに来てくださいね~」

私の元にも、紙が一枚配られた。はがきサイズのピンクの紙。自分の名前と、お目当ての男性の名前を書く欄がある。


(お目当てか・・・誰もいないな・・・)


今田さんは、まさかの既婚者という結末だった。

フリータイムで話をした男性達は、みんなごめんなさいの相手だったし、あとは誰一人取りとして印象に残っている人がいない。

誰の名前も書けなくて、白紙でもいいのかな、と考えていると、その気持ちを見透かすように三村さんが私に話しかけてきた。

「真木野さん、がっかりしてるでしょうけれど、男性のお名前、誰か書いてくださいね。これから話したいっていう方でもいいんですよ」

「・・・でも、特に・・・」

「ダメダメダメ。ダメですよ~!婚活は、諦めたらもう負けですからね。どなたか必ず書いてください。ゆっくり話してみたら相性よかった、なんてパターンも結構ありますからね。

それに、我が結婚相談所史上、お相手の名前を空欄で出した方って誰一人としていないんですよ。どうか、我が相談所開業以来の看板に傷をつけないように、どうか、どなたか書いてください」


(え、えー・・・)


やんわりと、「書かなきゃダメ!」と脅迫されたようだった。この状況で、白紙で出せる心の強さは今の私にはないものだった。


(けど、どうしよう・・・)


参加者の男性たちに目を向ける。

あの3人はごめんなさいだし、その他の男性たちとはほぼ話してないからわからないけど、なにかの間違いでうっかりカップルになったとしたら、それはそれで面倒だしな・・・。
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