猫になんてなれないけれど
顔を見合わせて、嬉しそうに2人が笑う。

見ていると、いいなあ、うらやましいって気持ちがやっぱり溢れてきたけれど、私はそれを、心の奥に押し込んだ。

「はーい!それではラストもう1組、発表しますよ~!」

三村さんが「フフフ」と笑う。誰と誰だ!?と、期待が高ぶる。

「・・・ジャーン!冨士原さんと、真木野さんでーす!」

「えー!」「うそー!」という女性達の声が聞こえた。

やっぱり、冨士原さんはちゃんとカップルになれたんだ、と、私は心の中で納得をした。

けれど、「あれ?」と、今聞いたばかりの発表を脳内再生、リピートしてみた。


(・・・今、『真木野さん』って言ってなかった?・・・聞き間違い?『マキノさん』って、もう一人女性がいたっけな?)


考えていると、三村さんがステージから降りてきて、私に笑顔で近づいてきた。

「びっくりですね~。フリータイムでは全然お話していなかったですもんね!」

「え」

「でも、よかったですね!!冨士原さんも、心の中で決めてたのかしら」

「さ、どうぞどうぞ!」と促され、呆然としたままステージへと連れて行かれた。

そこにはすでに冨士原さんがいたけれど、彼も、嬉しそうでは全くなくて、ただただ驚いている表情だった。

「はい!では、晴れて二組のカップル成立となりました~!おめでとうございまーす!」

パチパチパチ、と、会場中から拍手が湧いた。

冨士原さんを取り囲んでいた女性達も、悔しそうだったり悲しんだりはしているけれど、皆、もう仕方ない、といった様子で拍手を送ってくれている。
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