猫になんてなれないけれど
(どうしよう。ものすごく申し訳ないんだけど・・・というか、これは一体どういう展開!?)


まさか、冨士原さんがほんとに私を気に入って、選んで書いてくれたのだろうか。

・・・いやいやまさか。まさかまさか。

やっぱり完全極秘の調査とか?でもだからってなぜ私?それとも名前間違えた?「マキノミオ」って、似たような人がいたんじゃないの・・・??

ぐるぐると思考が止まらない。けれど、いくら考えてもわからない。

三村さんは、隣で笑顔で司会を続ける。

「それとですね、今回はなんと・・・驚かないでくださいよ~!実は、我が社は今年、創業10周年でありまして、また、今回のパーティが記念すべき1000回目の開催でした!

その記念といってはなんですが、カップルになったお二組の皆様には、ホテル20階にあります創作和食のお店『みずもと』へ、それぞれ、夕食を特別ご招待させていただきますよ~!」


(・・・えっ)


会場中がわあっと沸いた。ステージ上では、「きゃー!」と松田さんが歓声を上げた。小早川さんも、一緒に嬉しそうな顔で笑っている。


(夕食?夕食・・・って、これから一緒に、冨士原さんと二人で食事をするってこと!?)


驚いて、冨士原さんの顔を見上げた。彼は、やや戸惑い気味の表情だけど、ほぼ無表情に近いので、感情はいまいちわからない。

冨士原さんが、純粋に私を選んでくれたのか。それとも、極秘の調査の一環なのか。もしくはただの・・・何かを間違えてしまったのか、今は全くわからないけど。

私はただただ、この展開に戸惑うことしかできなかった。


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