猫になんてなれないけれど
「冨士原さんは、どうなんですか?」

「・・・女性に甘えるかどうかですか?」

「はい」

「・・・甘えませんね、全く」


(で、ですよね・・・)


そんな気はしたけれど。

猫好きなのは意外だったし、恋愛面でも、意外な面があるかと思った。

だけど、意外性はなかったですね・・・。

「じゃあ・・・甘えられるのが好き、とか?」

尋ねると、冨士原さんは中指で眼鏡を持ち上げて、「そうですね」と無表情な顔で言う。

「程度とタイプによりますが。まあ、基本的には」


(基本的には・・・。うーん、どんな程度とタイプなんだろう・・・)


この情報では、いまいちよくわからないけど。

なんとなく、小さくてかわいらしい女の子の姿が頭に浮かんだ。子猫みたいに、かわいい子。

「さっきのパーティではいなかったんですか?冨士原さんの好みのタイプ」

かわいい子も結構いたのに。尋ねると、冨士原さんは少し悩んでから返事する。

「・・・そうですね。感じのいい方もいましたが。全員、犬派だったので」

「・・・は?」


(犬派って・・・まさか、そこが最重要ポイントですか!?)


「動物好きなのは一緒じゃないですか。それに、私も犬派ですけど、猫だって好きですよ」

「・・・・・・ほう」

冨士原さんの眼鏡がキラリと光った。なんだか少し、怖い顔。

「では、もし結婚相手が猫を飼いたいと言ってきたらどうします?犬は好きだけど飼うのは嫌で、どうしても猫だけを飼いたいんだと言われたら」

「え、そ、そうですね・・・」

尋問のような感覚だった。半個室の空間に、警察官である冨士原さんと二人きり。変なことは絶対言えない。

酔ってるのかな、とも思うけど。
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