猫になんてなれないけれど
「あいつも、早く結婚すればいいのになあ」

先生のひと言に、永田さんと天川さんは「賛成!」とばかりに大きく頷く。

「ほんとですよねえ。一人暮らしなんでしょう?」

「ねえ。警察官なんて忙しそうなお仕事なのに。しかも、情報セキュリティだかなんだか、難しそうな部署に勤めてるんでしょう?絶対大変!作りに行ってあげてよければ、私、喜んで作りに行ってあげちゃうのになあ」

「ねえ」と、また2人で盛り上がっている。

相澤先生は、受け流すように「ははは」と笑っているけれど、冨士原さんの生活ぶりがひどくなったら、本気で頼みそうな気がしないでもない。



相澤先生と冨士原さんは、中学・高校時代の同級生だったそう。

ここらへんでは有名な中高一貫の男子校で、6年間、共に同じ剣道部で過ごした仲間ということだ。

相澤先生は中3・高3時代に部長をやっていたらしく、さぼり部員だった冨士原さんを、学生時代からいつも気にかけていたらしい。


(さぼり癖があったなんて、今の冨士原さんからは全く想像できないけどね・・・)


今は、警察官として多忙な仕事をしている冨士原さんの日常を、相澤先生は心配している。

以前一度、過労で倒れる事態があったそうで、相澤先生は、定期的に自分の病院・・・ここ、相澤内科クリニックに来院するよう促して、健康チェックをするとともに、必要に応じて栄養剤の点滴を打ったりしているのだ。

なんだかんだ言って、冨士原さんもちゃんとこうして来院するから、相澤先生のことは、頼りにしてるんだろうと思う。

「あ、雑談をしてすみません。みなさん遅くなっちゃいましたね。どうぞもう上がってください」
< 4 / 169 >

この作品をシェア

pagetop