猫になんてなれないけれど
猫カフェに行く前に、「強引に誘ったお詫びです」と、冨士原さんはランチをごちそうしてくれた。

時々訪れるというこじんまりした定食屋さんは、ボリュームもあってなかなか美味しい店だった。

男子大学生に大人気！という豚の生姜焼き定食を完食したら驚かれてしまったけれど、久しぶりにチェーン店ではない定食屋さんでごはんを食べることができ、私はとても満足だった。



そこから車で十数分。冨士原さん行きつけの猫カフェは、飲食店や雑貨店が入った雑居ビルの中にあるという。

近隣の駐車場に車を停めて、そこから歩いてすぐの場所。雑居ビルのエントランスを入って行くと、冨士原さんは慣れた様子で小さなエレベーターに乗り込んで、すぐに５階のボタンを押した。

ドッグカフェには何度も行ったことがある。けれど猫カフェは初めてで、なんとも言えずワクワクしていた。


（もちろん基本は犬派だけど・・・猫もかわいいもんね）


冨士原さんも、好きな場所に行くのだからワクワクしているだろうと思ったけれど、相変わらずの無表情。本当に、冨士原さんは感情が読みにくい。

「ここです」

エレベーターを降りて左側。かわいい雑貨屋さんの反対側に、「保護猫カフェ・まりも」と書かれた看板が掲げられていた。

窓越しに中の様子を窺うと、猫たちが思い思いに過ごしている様子が見えた。


（わ、かわいい・・・。猫もやっぱりかわいいよね）


「行きましょう」と声をかけられて、冨士原さんの後に続いて店に入った。

まずは手指の消毒をして、レジカウンターでドリンクを頼んで眺めのいい窓際の座卓に座った。

雑居ビルの中にあるお店だし、景色は期待していなかったけど、都会から少し離れたビルの５階から見える風景は、近くの公園や神社の緑が目に入り、なかなか和む光景だった。

「なんか、落ち着きますね」
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