猫になんてなれないけれど
テーブルは全て座卓仕様で、他のお客さんとの距離も十分空いている。「裕福な田舎の実家」という印象で、まったりとした空気がいいなと思った。
「そうでしょう。一人で来たくなりませんか」
「確かに・・・。ここならのんびりできますね」
話していると、店員の女の子が注文していたアイスコーヒーを2つ、座卓の席に届けてくれた。
冨士原さんはブラックで、私はミルクとガムシロップを入れて飲む。
「にゃー」
アイスコーヒーを飲んでほっと一息ついた時、一匹の猫が冨士原さんに近づいた。可愛らしいキジトラの子。胡座の膝に、スリスリと顔を擦り付けている。
「わ、かわいい」
「おいで」という気持ちで右手を出してみたけれど、私には見向きもせずに、猫は冨士原さんに相変わらずスリスリしている。
そんな猫の丸い頭を、冨士原さんは穏やかな顔で撫でていた。
(あ・・・優しい顔)
無表情か怒った顔か、わずかに口角を上げるぐらいの笑顔しか、見たことなんてなかったから。
こんなに優しい顔もするんだなって、驚きとともにちょっとドキッとしてしまう。
「・・・よく来るんですもんね。冨士原さんのこと、覚えているのかな」
「多分。ここに来ると、いつも寄ってきてくれるので」
「へえ・・・かわいい」
しばし様子を窺ってから、「こっちにもおいで」と再びチャレンジしたけれど、キジトラ猫はちらっと私を見ただけで、冨士原さんから離れない。・・・寂しい。
「この子は・・・女の子でしょうか」
「そうですよ。『モカ』っていう名前です。2歳ぐらいだったかな」
(2歳の雌猫・・・人間で言ったら、20代前半?お年頃だね・・・)
猫も、知的な感じのイケメン男子は素敵に見えたりするのだろうか。
そんなことを思っていると、もう一匹、白い猫が近づいてきて、冨士原さんの腰の辺りにスリスリとした。
「そうでしょう。一人で来たくなりませんか」
「確かに・・・。ここならのんびりできますね」
話していると、店員の女の子が注文していたアイスコーヒーを2つ、座卓の席に届けてくれた。
冨士原さんはブラックで、私はミルクとガムシロップを入れて飲む。
「にゃー」
アイスコーヒーを飲んでほっと一息ついた時、一匹の猫が冨士原さんに近づいた。可愛らしいキジトラの子。胡座の膝に、スリスリと顔を擦り付けている。
「わ、かわいい」
「おいで」という気持ちで右手を出してみたけれど、私には見向きもせずに、猫は冨士原さんに相変わらずスリスリしている。
そんな猫の丸い頭を、冨士原さんは穏やかな顔で撫でていた。
(あ・・・優しい顔)
無表情か怒った顔か、わずかに口角を上げるぐらいの笑顔しか、見たことなんてなかったから。
こんなに優しい顔もするんだなって、驚きとともにちょっとドキッとしてしまう。
「・・・よく来るんですもんね。冨士原さんのこと、覚えているのかな」
「多分。ここに来ると、いつも寄ってきてくれるので」
「へえ・・・かわいい」
しばし様子を窺ってから、「こっちにもおいで」と再びチャレンジしたけれど、キジトラ猫はちらっと私を見ただけで、冨士原さんから離れない。・・・寂しい。
「この子は・・・女の子でしょうか」
「そうですよ。『モカ』っていう名前です。2歳ぐらいだったかな」
(2歳の雌猫・・・人間で言ったら、20代前半?お年頃だね・・・)
猫も、知的な感じのイケメン男子は素敵に見えたりするのだろうか。
そんなことを思っていると、もう一匹、白い猫が近づいてきて、冨士原さんの腰の辺りにスリスリとした。