猫になんてなれないけれど
友人の過去
迎えた翌朝、月曜日。

出勤のため6:30に起床して、いつものように朝食前に軽く身支度を調える。

顔を洗って、化粧水をパシャパシャと頬につけながら、ふと、冨士原さんはどうしてるかなってぼんやりしながら考えた。

「・・・」


(・・・やばい・・・)


ふと、思い出してしまうとか。しかも朝イチ。

特別に想っているわけではないはずだけど、意識しそうになってくる。


(・・・いや、困る。冨士原さんは、ダメでしょう・・・)


そもそも、「絶対カップルにはならない」って、お互いに予想をしていた相手なのだ。

冨士原さんにしてみれば、猫派じゃないと恋愛対象じゃないっぽいし、子猫みたいにかわいい子が好みのようだし、患者さんだし、相澤先生の友達だし・・・。

それに・・・私の好みでもないはずで。


(でも、昨日は・・・楽しかったな)


はしゃぐような楽しさではなかったけれど、穏やかで、優しい時間を一緒に過ごした。

気持ちが満たされるような感覚で、私はとても楽しかった。

夕飯も一緒に食べようか、なんて話も途中で出たけれど、冨士原さんが仕事に呼ばれてしまったために、私を家まで送ってくれて、そのままそこでさよならをした。

だけど。

もっと、話をしたかった。もっと、一緒にいたかった。

そんな気持ちが湧き出ては、誤魔化すように、私はそれを押し込めた。





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