猫になんてなれないけれど
午前中の診察は、いつもより患者さんが少なくて落ち着いていた。
受付時間ギリギリに来院した患者さんもいないので、このままいけば、定時に昼休憩に入れそう。
そんなことを思いながら壁掛け時計に目をやると、まさに13時ぴったりに、受付の天川さんがクリニックの自動ドアを一旦閉鎖しに行った。
(よし、午前中は終わりだね。午後の準備してから休憩に入ろうかな)
午後の検査をチェックして、必要物品の準備をしておくことにした。午後の診察前でも間に合うけれど、やっぱり、早めの準備は自分自身が安心だ。
メモを片手に、診察室と準備室を行き来して物品を揃えていると、椅子に座っていた相澤先生が、大きく「うーん!」と伸びをした。
「もう13時かー。今日は思ったよりも患者さん少なかったなあ」
「そうですね。月曜日なのにめずらしい。午後が混むかもしれないですね」
「そうだなあ。・・・あ、そうだ、真木野」
手招きをされて近づくと、先生は、引き出しから本のようなものを取り出して、「はい」と私に差し出した。
手に取って見てみると、大手結婚相談所のパンフレットだった。
思わず、それをまじまじ見てしまう。
「あ、いや、嫌味かなとも思ったんだけどさ、真木野、失恋したって言ってただろう。手堅く、こういうのに行ってもいいんじゃないかと思ってさ」
「ああ・・・」
門脇さんに続いて2人目。結婚相談所の紹介をしてもらったの。
「ありがとうございます。でも、今はいいかな・・・。とりあえず」
「そうか?うーん・・・なんか元気がないけどな。じゃあ、パンフレットだけでも持っとけよ。気持ち変わるかもしれないし」
「じゃあ・・・」
お礼を言って、ひとまず受け取ることにした。
今は行く気にならないけれど、先生が、私の今後を気にかけてくれているのはわかってる。
「あっ、そうだ!大和にも、話だけでもしとくかなあ」
相澤先生の呟きに、私の胸はドキッとなった。思わず聞き返してしまう。
「冨士原さん、ですか」
「そう。あいつもいい歳なんだしさー。結婚も真剣に考えていいと思うんだよなあ」
相澤先生は、私と冨士原さんが一緒に猫カフェに行ったことをもちろん知らない。
当然、そのきっかけとなった婚活パーティの一件も。
「冨士原さんは・・・どんな人が好きなんでしょうか」
長年の付き合いのある先生ならば、きっと色々詳しいはずだ。第三者目線で見た冨士原さんの好みのタイプが気になって、どさくさに紛れて聞いてみる。
なにか怪しまれるかもしれないと、かなり、ドキドキしながらも。
「んー・・・。どうかなあ。あいつ、自分のことあんまり話さないからなあ。最近の彼女はわからないけど・・・学生時代は、おしとやかな感じの、おとなしい女の子と付き合ってたなあ」
「おしとやかで、おとなしい女の子・・・」
受付時間ギリギリに来院した患者さんもいないので、このままいけば、定時に昼休憩に入れそう。
そんなことを思いながら壁掛け時計に目をやると、まさに13時ぴったりに、受付の天川さんがクリニックの自動ドアを一旦閉鎖しに行った。
(よし、午前中は終わりだね。午後の準備してから休憩に入ろうかな)
午後の検査をチェックして、必要物品の準備をしておくことにした。午後の診察前でも間に合うけれど、やっぱり、早めの準備は自分自身が安心だ。
メモを片手に、診察室と準備室を行き来して物品を揃えていると、椅子に座っていた相澤先生が、大きく「うーん!」と伸びをした。
「もう13時かー。今日は思ったよりも患者さん少なかったなあ」
「そうですね。月曜日なのにめずらしい。午後が混むかもしれないですね」
「そうだなあ。・・・あ、そうだ、真木野」
手招きをされて近づくと、先生は、引き出しから本のようなものを取り出して、「はい」と私に差し出した。
手に取って見てみると、大手結婚相談所のパンフレットだった。
思わず、それをまじまじ見てしまう。
「あ、いや、嫌味かなとも思ったんだけどさ、真木野、失恋したって言ってただろう。手堅く、こういうのに行ってもいいんじゃないかと思ってさ」
「ああ・・・」
門脇さんに続いて2人目。結婚相談所の紹介をしてもらったの。
「ありがとうございます。でも、今はいいかな・・・。とりあえず」
「そうか?うーん・・・なんか元気がないけどな。じゃあ、パンフレットだけでも持っとけよ。気持ち変わるかもしれないし」
「じゃあ・・・」
お礼を言って、ひとまず受け取ることにした。
今は行く気にならないけれど、先生が、私の今後を気にかけてくれているのはわかってる。
「あっ、そうだ!大和にも、話だけでもしとくかなあ」
相澤先生の呟きに、私の胸はドキッとなった。思わず聞き返してしまう。
「冨士原さん、ですか」
「そう。あいつもいい歳なんだしさー。結婚も真剣に考えていいと思うんだよなあ」
相澤先生は、私と冨士原さんが一緒に猫カフェに行ったことをもちろん知らない。
当然、そのきっかけとなった婚活パーティの一件も。
「冨士原さんは・・・どんな人が好きなんでしょうか」
長年の付き合いのある先生ならば、きっと色々詳しいはずだ。第三者目線で見た冨士原さんの好みのタイプが気になって、どさくさに紛れて聞いてみる。
なにか怪しまれるかもしれないと、かなり、ドキドキしながらも。
「んー・・・。どうかなあ。あいつ、自分のことあんまり話さないからなあ。最近の彼女はわからないけど・・・学生時代は、おしとやかな感じの、おとなしい女の子と付き合ってたなあ」
「おしとやかで、おとなしい女の子・・・」