猫になんてなれないけれど
「美桜ちゃん、いいじゃないか。勤め先の先生の友達で警察官って、めちゃくちゃ安心できる相手じゃん。しっかりした人なんだろう?いやー、まさか、オレの紹介した婚活パーティで、こんなに早くうまくいっちゃうなんてなあ」

「いや、だから、違うって・・・」

2人とも、うまくいく前提で話をどんどん進めるけれど、そもそも私はひと言も、「好きになった」なんて言葉は言ってない。

それに、私もだけど、冨士原さんこそ私はタイプじゃないと思うから、もし・・・もし仮に、私が今後好きになることがあったとしても、断られることはわかってる。

30歳を目前に、結婚を意識した元彼にフラれたばかりの状態で、なおも連続でフラれてしまう覚悟など、私には、まだまだできていなかった。

「でもよかったよ。前の彼にフラれたときはすごい落ち込んでたから心配したけど。美桜ちゃんは、これで一件落着したよなあ」

「は、はあ!?だから、落着してませんけど!」

「いやいや。落着するとしか思えないでしょー」

無責任なことを言い、門脇さんは「ははは」と笑った。

私はちょっとムッとしたけれど、これ以上話しても堂々巡りになりそうなので、とりあえず、日本酒を一口飲んで落ち着いた。

冨士原さんのことは、またゆっくり考えるとしよう・・・。

「ああ・・・そうだ」

私が落ち着いたところで、門脇さんが呟いた。

「美桜ちゃんの話の後でなんだけど。ちょっと、違う話してもいい?」

「え?」

門脇さんが、急に真面目になった顔で言う。私と萌花は、改まった気持ちで頷いた。

胸ポケットから、スマホを取り出し操作をはじめる門脇さん。いつもと違う雰囲気に、嫌な予感を感じてしまう。

「・・・これ。飲食店の口コミサイトなんだけど、萌花ちゃん知ってるかな」

門脇さんは、萌花と私に見やすいようにスマホの画面をくるりと回す。

そこには、よく見る大手飲食店の口コミサイトが映っていた。ここ、「はなの季」の紹介が丁度載っているページ。

「・・・って、え?全体の評価が1!?」

お店は、10点満点で評価される仕組みになっていて、全体評価が5~8点をつけられているお店が多い。

そんな中、全体評価が1というのは最低点になるわけで・・・。

「なんで?こんなに美味しいし居心地いいのに・・・」

「うん・・・。なんか、来たことない奴が書いてるっぽい感じなんだよね」

門脇さんのスマホを借りて、萌花と一緒に、口コミの内容をスクロールして見ていった。

すると、「まずい」「店が汚い」などの口コミが何件も投稿されおり、萌花はショックを受けていた。
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