猫になんてなれないけれど
私はまた笑ってしまった。

無表情で語るから、そこがまたおもしろかった。

「真木野さんは動じませんね。犬派であることに」

「はい。だって、ずっと一緒に暮らしてたんですよ?ちょっと猫カフェに行ったからって、簡単には覆りません」

「・・・そうですか。残念ですね。あれだけかわいいのに伝わらないとは」

「いや、だから、普通にかわいいとは思っていますけど」


『それなら・・・試しにもう一度、猫カフェに連れて行ってみてください』


そんな言葉を口にしそうになったけど、私は慌てて飲み込んだ。

だって、そんなことを言ったなら、まるで、デートをせがんでいるように思うから。


(・・・・・・ああ・・・。そうなのかな・・・)


そんなつもりはないって思う。だけどまた、一緒に行きたいな、と思う。

私が、一人で猫に会いに行きたいわけではなくて。冨士原さんと一緒に行きたい。

私はもう、自分の気持ちを認めるしかないって思った。









< 68 / 169 >

この作品をシェア

pagetop