白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)

「十環先輩、
 龍兄からの電話、何だったんですか?」


 桃ちゃんの問いに
 もやがかかった心をごまかすように
 俺はまた、笑顔を作った。


「桃ちゃんにお弁当を作りたいんだって。
 なんで恋に作らせるんだって
 怒られちゃった」


「十環先輩が
 恋兄にお弁当を作らせたんですか?」


「そう。
 昨日恋都さんに電話して
 お願いしちゃった」


「なんで……そんなことを……」


「だって、恋都さんが作った
 お弁当を食べる桃ちゃんの顔
 見たくてしょうがないから」


 あきれ顔の桃ちゃん。


 その瞳もまた
 悲しげな光が宿っている。


 今日はなぜか
 そんな瞳の桃ちゃんをたくさん見た。

 
 そのせいか
 お昼休みが終わってからも
 桃ちゃんの悲しく光る瞳が
 頭から離れてくれなかった。

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