白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
私が着替えから戻ると
十環先輩はシートを
ひいているところだった。
「桃ちゃんはやっぱりすごいね。
俺は男だし、本気を出せば
1発くらいは当たるかなって思ったけど
全然ダメだったし」
「優しいですね。十環先輩は」
「え?」
「1回だけ、回し蹴りが私の頬すれすれで
ピタッと止まりましたよね。
あれ、当たらないように
寸止めしてくれたでしょ?」
「そうだったかな?」
「十環先輩が本気を出して
いないことくらい、バレバレです。
私のレベルに
合わせてくれたんですよね?」
「そんなことないよ。
あ、時間なくなっちゃうから
お昼たべよっか」
私もつい微笑んでしまうくらい
あったかい笑顔を向けた十環先輩。
十環先輩の気遣いも、笑顔も
どちらもお日様みたいに温かくて。
また私の心が
キュンキュンと跳ねまくっている。
でも、十環先輩が
私に笑いかけてくれるのは
今だけだよね?
お弁当を食べ終わって
結愛さんの思いが詰まったキャラメルを
渡したら
十環先輩の心の中は
結愛さんでいっぱいになるよね?
隣に私がいることを忘れて
結愛さんが大好きだって想いが
止められなくなるよね?
そんな十環先輩を想像して
胸が苦しくなった。
ダメダメ
そんなくらい顔をしちゃ!
今日は笑顔でいるって
決めたんだから!
沈んだ気持ちをごまかすために
自分には似合わないくらい
オーバーに微笑んでみた。