白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
一颯の言葉に
俺は2つのキャラメルの箱を
テーブルの上に置いた。
「これは結愛さんが
俺にくれたキャラメル」
「結愛さんと会ったのか?」
「違うよ。
昨日桃ちゃんの実家のお店に
結愛さんが来たんだって。
俺にこのキャラメルの箱を渡してって
お願いされたんだって。
だからさ、桃ちゃんから受け取った」
「それだけ?」
「中に結愛さんからの手紙が入ってた。
別れてからも
ずっと俺のことが好きだったとか
親が決めた相手と
結婚させられそうになったけど
逃げたとか書いてあって。
もう一度、付き合ってほしいって
最後に書いてあった」
「良かったじゃん、十環。
ずっと大好きだった結愛さんが
お前のところに戻ってきてくれてさ」
「結愛さんとまた付き合えるなんて
嬉しいはずなのに……
ずっと望んでいたはずなのにさ……
俺、全然そんな気になれなくてさ。
最後に見た桃ちゃんの顔が
頭から離れてくれない……」
俺はもう一つのキャラメルの箱を
一颯に差し出した。
「このキャラメルの箱、
一颯、開けてみてくれない?」
「こっちもキャラメルなのかよ?」
そうつぶやきながら箱を開けた一颯。
「は?
なんだよこれ?」
「桃ちゃんが俺に渡してきた」
箱の中には
白い紙でくるまれたキャラメルが5つ。
その1個1個に
文字が書いてある。
『ド』『S』『あ』『く』『ま』って。
それを見た一颯は
「桃ちゃんらしいな」と鼻で笑った。
でも俺は
笑うことなんてできない。
意地っ張りで
自分の気持ちを表に出すのが
苦手な桃ちゃんが
このキャラメルに、俺への想いを
詰め込んでくれていたから。