白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)

「まって、まって。
 龍牙さんって
 お前がいた暴走族の総長だった
 あの龍牙さん?」


「そうだけど」


「いきなり言われても
 信じられないんだけど。

 でも、似てるって言えば似てるよな。
 顔じゃないぞ。あの性格。

 大事なものを守るためには
 とことん突っ走る所とか。
 強がってるくせに、実は甘々なとことか」


「確かに龍牙さんは
 俺に甘えてきたりもするけどさ。
 桃ちゃんは、甘々な感じしないけど」


「は? 
 桃ちゃんのどこを見てんだよ。

 桃ちゃんこの家に来たときは
 いっつも六花に甘えてるぞ。

 それを男にやれば
 簡単に男なんて落ちるのにって
 いつも思うんだけどな。

 だって、桃ちゃん
 すっげー綺麗な顔してるだろ?」



「まあ。百目家は
 美男美女ぞろいだからね」


「で、十環はどうするわけ?」


「……。
 それは、結愛さんと桃ちゃん
 どちらを選ぶかってことだよね?」


「ああ」


「今はまだ……何も考えられない。
 結愛さんのことはもちろん大好きだし
 今でも俺のことを
 思っていてくれたって知って
 本当に嬉しいんだ。

 でも
 たった1週間くらいだけど
 桃ちゃんが仮の彼女になって
 俺の隣にいてくれて。
 結愛さんとの思い出を
 私が塗り替えるって言ってさ。
 
 ももちゃんって
 一緒にいると本当に面白いんだよね。
 俺なんて、女子には
 優しい言葉しかかけないのにさ。
 桃ちゃんにはなぜか
 毒舌悪魔モードでイジメたくなるしさ」


「で、キャラメルに書いてあったわけか。
 ドS悪魔って。

 桃ちゃんもお気の毒だね。
 十環が悪魔モードに入ったら
 徹底的にイジメられるからね」


「一颯、俺にいじられるのが
 嬉しいんでしょ?」


「は? 嬉しくないし。
 十環の悪魔っぷりは、半端ないからな。
 ま、俺はそんな悪魔に
 助けられたことが
 いろいろあったのは事実だけどさ」


「俺さ
 結愛さんが大好きなはずなのに
 桃ちゃんのことを
 かわいいなって思っちゃったり。
 他の男のことを
 笑顔で話す桃ちゃんを見て
 なんか嫌だなって思う時があるんだ。

 どうしようもなく
 心が痛むって言うかさ。
 だから今は
 自分の気持ちが全然わからない」


「ほい!」


 どうしていいかわからず
 ため息ばっかりの俺に
 いきなり一颯が
 真っ白な犬のぬいぐるみを
 投げ渡してきた。


 瞳が真ん丸で
 かわいい顔をしているのに。

 なぜか眉毛が凛々しくて太いこの犬は
 一颯が『ごんぞう』と名付け
 子供の頃からの相棒らしい。 
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