白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)

 十環先輩とケンカの手合わせをして
 笑いながらお弁当を食べて
 それで、結愛さんのキャラメルを
 笑顔で渡すつもりだった。

 自分の想いなんて
 伝えるつもりじゃなかった。


 十環先輩の仮の彼女になった時には
 卒業まで、隣にいられれば
 それで充分って思っていたはずなのに。

 一緒にいればいるほど
 十環先輩のことが
 大好きになってしまった。


 十環先輩は結愛さんのことが大好きで。

 私のことは
 男友達みたいな存在としか
 思っていないって
 わかっていたはずなのに。


 でも……


 十環先輩と結愛さんは
 本当に結ばれるのかな?


 前に別れた原因は
 結愛さんのお父さんに反対されたこと。


 まだ、十環先輩と付き合うことを
 許してもらえていないのに
 また付き合いだしたら
 同じように別れさせられちゃうのかな。


 そうなったら。

 きっと十環先輩は
 今よりも苦しむはず。


 結愛さんが自分のことを大好きで
 戻ってくれた喜びの後に
 どん底に落とされちゃうはず。


 そしたらまた
 得意の作り笑顔でごまかすんだろうな。

 辛いって想いを自分の中に閉じ込めて
 王子スマイルを振りまくだろうな。


 十環先輩には、そんな辛い思い
 もうして欲しくないのにな。


 大好きな人と一緒にいられる幸せが
 手に届きそうなのに
 まだ大きな壁に阻まれたままで。

 どうしたらその大きな壁を、
 取りのぞいてあげられるんだろう。


 カウンターに肘をついて
 頭を抱えたまま、必死に考えてみた。


 十環先輩が
 心から笑えるようになるための方法を。

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