白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)

「それなら……出ていく」


 私の言葉に
 お母さんは「は~」と
 深いため息をついた。


 そして立ち上がり
 その場をうろうろ歩き回ると
 ふと足を止め私の顔をじっと見た。


「桃、誰も傷つけない?」


「……うん」


「桃自身も、傷つかない?」


「……私はどうかな。
 今が結構しんどいから
 これ以上痛みが増しても
 どうってことないと思う」


「桃を見ていると
 ほんと自分にイライラする」


「え?」


「これが良いって思ったら
 誰が何と言おうと
 ひたすら突っ走っちゃうところ、
 昔の私に、本当にそっくり。

 だから余計に
 桃を見ていると心配でしょうがないのよ。
 私の若い頃みたいに
 傷つくんじゃないかとか思っちゃうから」


「傷ついても大丈夫だよ。
 今までだって、ごまかしてきたし」


「大丈夫じゃないでしょ?
 あんたは、人に辛いとか苦しいとか
 言えないでしょ?
 そうやって一人で抱え込んで。」


「……」

 
「は~。わかったわよ。
 桃が警察に世話になった時には
 お母さんが一緒に
 頭を下げてあげるから。

 警察にはレディース時代に
 お世話になった人がたくさんいるのよ。

 桃たちには言えなかったけど
 何度も補導されたからね。
 若いときには」


 そう言ってお母さんは
 ニヤリと私に微笑んだ。

 そして、私の頭をポンポンとして
 お店の奥に消えていった。


「お母さん……
 カッコ良すぎなんだけど……」


 ただの怖い母親だって思っていた。


 でも違ったんだ。
 
 実は私のことを
 深く心配してくれているってことが
 嬉しくて
 フフフと笑みがこぼれた時には
 涙も一緒にあふれていた。


 あとは……

 きちんと計画を練らなきゃな。

 十環先輩が幸せになるための計画を。


 その日の夜、
 私は結愛さんに電話をかけた。


 私の考えた計画に
 協力をしてもらうために。
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