白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)

 本当に、本当に大好きだった。

 十環先輩のこと。


 陽だまりみたいに
 温かく包んでくれるような
 優しい笑顔の十環先輩も。


 私をいたぶるように
 悪魔のようないたずらな笑顔を向ける
 十環先輩も。


 そんな大好きな十環先輩が
 心から想っている相手は
 私ではなく結愛さんで。


 きっと今ごろ
 結愛さんを思いっきり抱きしめ
 心から微笑んでいると思う。


 十環先輩には
 幸せになってもらいたいと思った。

 もう、心の痛みをごまかすために
 辛そうに微笑まないで欲しいなと思った。


 それなのに。


 十環先輩が結愛さんのものに
 なってしまった悲しみは
 想像以上に大きくて。

 私はトイプーの背中に
 自分の背中をピタッとくっつけたまま
 部屋から声が漏れるほどの声を出し
 泣いて泣いて泣き続けた。
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