白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
「桃ちゃん、お願いがあるんだけど」
「ムリ」
桃ちゃんって
ちゃん付けをするあたり
やっぱり怪しい。
「まだ俺、
何も言ってないんだけどなぁ」
「恋兄が私にお願いすることで
まともだったことなんて
1度もないじゃん」
そんな私の反論なんて
恋兄の耳には全く届いていないらし
「桃ちゃん
今日はこれを着て店番ね」と、
うす桃色でレースひらひらワンピースを
私に見せてきた。
「は? え?? なんで?
なんでこれを着て
店番をしなきゃいけないのよ」
「だって、母さんが言ってたよ。
今日はバレンタインだから
桃にはコスプレをさせるって」
「は~???」
言っている意味が分からない。
なぜ私が
バレンタインだからって
コスプレ姿でお店に立つわけ?
でも、簡単に想像ができる。
電卓を片手に
目をキラーんと光らせたお母さんが。
私のお母さんは
『これなら稼げる!』と睨んだことは
とことんやる。
拒否権なんて子供に与えず
背中が凍り付きそうな鋭い瞳で
睨みつけやらせるのだ。
夏には
浴衣の写真を何枚も撮らされて
ホームページにアップされた。
私が絶対嫌だって、叫んだのに。
『この浴衣
六花ちゃんにあげたいんでしょ?』って
脅しまで使って。
だからコスプレでお店にたつのは
避けられない。
でもでも
恋兄に差し出されたこの服は
絶対にイヤ!!
だって
ロリータ服を作ることに
命を懸けている恋兄は、
『こんな服、私に似合うか!』って
投げつけたくなるほど
ラブリーなワンピースを
手にしているから。