白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
やっと私の涙が枯れ果てたころ
だまったまま背中を貸してくれていた
トイプーが、冗談交じりに声を発した。
「桃華さんが背中を貸してって
言った時には、
僕の背中に顔をくっつけて、
甘えてくれるって期待したんですけど」
「は?
そんな恥ずかしいことはしないし」
「ま、思いましたけどね。
素直じゃない桃華さんらしくて
かわいいなって」
「かわいいって言うな」
「言いますよ。
だって、僕は決めたので。
桃華さんに怒鳴られようが
蹴られようが言いますから。
桃華さんのことを
かわいいって思った時は、
どんな時でもかわいいって言おうって」
「は?
私よりもお姫様チックな
顔をしているトイプーに
かわいいって言われても、
嬉しくないんだけど」
「そんなぁ……」
「でも、ありがとな、トイプー。
静かに背中を貸してくれて」
「あと2枚、
泣きたい時には
僕のところに来てください券が
残っていますからね。
いつでも、背中を借りに来てください。
なんなら
抱きしめるとかでもオッケーですから」
「もう、トイプーに
泣きつくとかしないから」
「そんなこと言っていいんですか?
桃華さんは僕にしか
弱い自分を見せられないんでしょ?」
「もう、あの時言ったことは撤回!
トイプーにも
こんな弱っちい自分は見せないから!」
「またまた。
僕はいつでも待ってますよ」
そう言って
めいっぱいの笑顔を私に向けてくれた
トイプー。
今回トイプーがいてくれて
本当に良かったって思う。
一人きりで悲しんでいたら
辛い思いを爆弾のように抱え込んだまま
強がり続け、
いつか爆発していたかもしれない。
トイプーの背中を借りて
流した涙と一緒に、
十環先輩への想いも
少しは流されてくれた。
それだけでも、全然違う。
トイプーには
感謝してもしきれないな。
そんな思いを心の中にとどめながら
私は自分がもっと元気になるために
いつも通りトイプールのことを
言葉でイジメ続けた。