白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
「美紅ちゃん、
そろそろステージイベントの
最終確認をしたいんだけど」
「あ、はい。今行きます。
百目さん、
今日は遠いところまで来てくれて、
本当にありがとうございます。
お弁当と一緒に
卵焼きを入れておきました。
百目さん達だけのサービスなので、
他の出展者さん達には
内緒にしてくださいね」
そう言って成瀬さんは、
私たちに手を振り
ステージに向かって駆けて行った。
「素敵な人だったね」
私の素直な感想に
意味深な返事を返したトイプー。
「桃華さんとは……
違うタイプの人でしたね」
「は?
トイプー、それって何が言いたいわけ?」
「え? 僕が素直に思っただけですよ。
成瀬さんは
天使オーラみたいなものが出ていて。
桃華さんは……」
「私は何? 素直に言ってごらん」
「怒らないですか?」
「うん。
思ったことをそのまま言ってくれたら
怒らない」
「桃華さんは……
ドロドロした液体が入った鍋を
グツグツ煮込んで、
誰を煮込んで食べようかと
不気味に笑う魔女みたいですよね」
「トイくん。
それは、本気で言っているのですか?」
「こ……怖いです、桃華さん。
目が……目が……魔女みたいに怖いです」
「誰が魔女だ!」
鋭い目つきでトイプーに怒鳴るも
トイプーはお腹を抱えて笑い転げている。
「桃華さん、
僕の予想通りのリアクションを
してくれるんだから。
笑いが止まらないです」
「は~。
いつの間にか私も
トイプーに遊ばれるような女に
なり下がっちゃったか」
「桃華さんも、僕にいじられるのが、
本当は嬉しいくせに」
「嬉しくないから!」
「もうすぐステージに
この商店街で大人気の
二人組が登場するんですって」
「へ~。どんな人達?」
「『アルティメット』っていう名前で、
ギターをひきながら歌うを
高3の2人みたいです。
すっごくイケメンって
お客さんたちが騒いでいましたよ」
「イケメンかぁ」
「大好きな彼女がいるって
2人ともファンに公表しているみたいで。
彼女への想いをつづった歌が
『こんなに愛されて羨ましい』って
ファンの子たちが憧れるみたいなんです」