白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)

 キャー!!
 ギャー!!
 

 悲鳴のような叫び声が
 ステージ前から響いてきた。


 トイプーが言っていた
 『アルティメット』という二人組が
 ステージに登場して
 ファンの子たちが熱狂している。


 私の位置からじゃ
 ステージに立つ二人の顔までは
 はっきり見えない。


 でも、マイクを通した色気のある声は
 はっきり聞こえてくる。


 は~。

 今から聞かなきゃいけないのか。

 大好きな彼女への想いを詰め込んだ
 ハッピーラブソングの数々を。


 尊(みこと)と奏多(かなた)と
 名乗る二人が
 ギターをはじきながら歌い始めた。


 そうですか。 
 そうですか。

 そこまで彼女さんのことが
 大好きなんですか。


 甘い声を聞くだけで
 愛おしい人を思いながら
 歌っているんだろうなって
 いうのがわかる。


 そのうえ歌詞をよくよく聞くと
 聞いているこっちが
 恥ずかしくなるくらい、
 愛の告白が詰め込まれている。


 尊さんと奏多さんを
 ここまで虜にしちゃう女性って
 どんな人なんだろうな。


 ま、私なんかと正反対で
 六花とか結愛さんみたいに
 守ってあげたくなる女の子なんだろうな。


 二人の歌声が私の心に届けば届くほど
 一人ぼっちの自分が惨めになって
 机にぺたりと、頬をくっつけた。

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