白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
さっきまでのハッピーソングを
聞いている時よりも、
明らかに心が締め付けられる。
苦しくなる。
それなのに。
歌詞を頭でイメージできるほど
この曲を聞き入ってしまう自分がいた。
曲が終わった時には
自分の頬が濡れていて
「この歌を聞きながら泣いていたんだ」
って気がついた。
お客さんはこのテントにはいないけど
周りの出店者さんに
泣き顔なんて見られたくなくて
私は必死に、手のひらで涙をぬぐった。
ダメだ。
早く気持ちを切り替えなきゃ。
アルティメットのステージが終わったら
またお客さんが
どっと押し寄せてきちゃうから。
私はお弁当の袋の中から
心を癒してくれるような
黄色い卵焼きを取り出すと、
口に運んだ。
優しい甘さが口の中に広がって、
心にしみていく。
心に空いた傷を
ガーゼで塞いでくれるような
そんな優しい味の卵焼きだった。
なんかちょっと
この卵焼きで元気をもらっちゃった。
お弁当もいただいて
この後も店番、頑張るぞ。
そう思いながら
卵焼きを口に運ぼうとしたとき。
「桃ちゃん」
私の目の前に
目がなくなるほどニコッと笑った
十環先輩が現れた