白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)

 どんよりした感情が私の心を曇らせる。


 でも、そんな自分を
 十環先輩に見せたくない。


 こんな時は
 女王様モードでごまかすしかないか。


 私は体中の息を吐き出すと
 十環先輩をギロリと睨んだ。


「な? なに? 桃ちゃん。
 スルメ、嬉しくなかった?」


「すっご~く嬉しいですよ~」


「桃ちゃん、目がヤバくなってきたけど」


「十環先輩、
 机に手のひらを置いてもらえますか?
 指を思いっきり開いて」


「だから桃ちゃん、その目が怖いって。
 顔は笑っているのに
 目は笑ってないし」


「十環先輩の手の指の間に、
 スルメの櫛を順番に刺していきますね。
 トントントントンって。

 大丈夫ですよ~
 刺さっても
 そんなに痛くはありませんから~」


「俺、指の間をトントンされるために
 スルメをあげたわけじゃ
 ないんだけど……」


「それが嫌なら、
 十環先輩、
 今からあの柱の前に立ってください」


「桃ちゃん、何をする気?」


「ダーツです。
 大丈夫ですよ~。
 十環先輩の顔には刺さらないように
 思いっきり投げますから~。

 スルメ、100本あるんですよね~?
 投げがいがあるな~」


 スルメのボトルを
 愛おしそうに抱えながら、
 十環先輩に向かって
 淀んだ瞳でニコッと微笑んでみた。


 そんな私を見て
 必死に笑いを我慢していたのか
 十環先輩はお腹を抱えながら笑い出した。
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