白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)

　１０キロ走り終わり
　虎兄の後に続いて家に入る。


　走る前までは
　虎兄のことを見直したはずだったのに。

　今、私の目は吊り上がっている。


「虎兄、
　いつも言ってるじゃん。
　走るのが早すぎだって」


「は？
　桃がノロいだけだろ？
　俺はこんなにゆっくり
　走ってやっているのにさ」


「走ってやってるって何よ！」


「言葉の通りだよ。
　俺について来いよ、ちゃんと」


　そんな言い合いをしながら
　キッチンに入ると。

　家族勢ぞろいで
　ダイニングテーブを囲んで座っていた。


「桃ちゃん、虎ちゃん。
　早く座って。
　おいしいご飯を頂きましょう」


　お母さんが……優しい……


　怖い！　怖い！


　前にもこういうことが
　あったような……


　寒気で背筋がぶるっとふるえる中
　椅子に座った時。


　陽だまりみたいに温かい声が
　耳に届いた。

「桃ちゃん。
　朝からそんな怖い顔しないの」


　その声は……
　十環先輩！！


　見上げると
　王子スマイルで微笑む
　十環先輩が立っていた。