白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
あれは……
トイ君だ。
うつむきながら
口がぼそぼそ動いているトイくんに
気づかれないように近づいてみた。
「なんで僕だけ……ウサギ……
しかも桃華さんが……桃華さんが……
う~~~」
トイくん。
今回もまた
ウサギの着ぐるみを着せられているのが
嫌なんだね。
しかも、桃ちゃんを
俺に取られちゃったことが
悲しくてしかたがないみたい。
トイくん、本当にごめん!!
俺、桃ちゃんのこと
一生、手放す気はないから!!
トイくんは相変わらず
今にも泣きだしそうな瞳で
しゃがみ込んでいる。
そんなトイ君にタタタと近寄ったのは
りっちゃんだ。
「大丈夫ですか?」
心配そうに真ん丸な瞳で見つめる
りっちゃん。
その声にふと顔をあげたトイ君が
りっちゃんを見つめたまま
固まっている。
トイ君の顔がだんだん
ピンクに染まってきたけど。
りっちゃんに一目ぼれでも
しちゃったかな?
「トイプー君ですよね?
どこか痛いところがあるんですか?
私、痛み止め持っていますよ」
りっちゃんはななめ掛けバックの中を
ガサゴソしはじめた。
トイ君はというと
そんなりっちゃんを見つめたまま
全く動かない。
トイ君って
顔を見ただけでわかりやすいな。
今、りっちゃんに
キュンキュンしているのがバレバレだよ。
少し離れた場所にいる一颯を見ると
瞳がメラメラ燃えている。
そして一颯はタタタと
りっちゃんに駆け寄り
「あれ、薬が見つからないな」と
カバンの中をのぞき込むりっちゃんを
後ろからぎゅーっと抱きしめた。
「え? いっくん?」
「ごめんな。
こいつ、俺の女だから」
あ~あ。
トイ君、また凹んじゃったし。
って、トイくんが悲しんでいるのは
俺が桃ちゃんを奪っちゃった
からなんだけどね。
名前も『トワ』と『トイ』で
1文字違いだし。
本当はトイ君と
仲良くなりたいんだけどな。