白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)

「十環くんと、一颯くんは
 これに着替えてもらえる?」


「俺もですか?」


 一颯の驚いた声に
 全く動じない美穂さん。

 相変わらずニコニコ笑っている。


「そうよ。桃と六花ちゃんだって
 おめかしするんだから。
 彼氏が頑張らなくて、どうするの?」


 意味不明なことを言ってくる美穂さん。


 でも俺は
 ちょっとウキウキし始めた。


「俺と一颯も
 お揃いってことじゃん」


「十環……
 俺に着物が似合う気が
 全くしないんだけど……」


「そうかな?
 花火大会の時に
 一颯も浴衣を着てたじゃん。

 りっちゃん、
 浴衣姿の一颯がカッコいいって
 言っていたけどね」


「え? そんなこと言ってた?」


 ごめん、一颯。

 りっちゃんがそんなことを
 言ったかどうかは、知りません。


 ここは、一颯に着物を着せるために
 りっちゃんが言ったということで。


「言っていた、言っていた」


「十環くんも一颯くんも、
 この着物を着たら
 ますます惚れられると思うわよ。

 男の浴衣姿って
 色気があって素敵でしょ?」


「じゃあ……着てみようかな」


 一颯の承諾を得た美穂さんは
 満足そうに笑っている。


 美穂さん
 瞳がお金みたいに輝いていますよ。


 着物を着て、俺たちをお店に立たせ
 お客さんを取り込もうって作戦。
 俺にはバレバレです。

 一颯には気づかれていないと思うけど。


 そんなこんなで
 俺の大好きな人たちが集まった
『呉服屋 百目』
 まもなくオープンです。
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