白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)


「桃ちゃん、俺、そろそろ帰るね。
 あ、その前に1枚だけ写真を撮らせてよ。
 お姫様みたいにかわいい、桃ちゃんをさ」


 お姫様みたいにかわいいか…………


 なんでだろう。 


 十環先輩にそんなこと言われたら
 前の私ならキュンって倒れるほど
 喜んだはずなのに。


 私だけに向けてくれる
 この贅沢な微笑みを
 今は見たくないなって思ってしまう。


 誰か……
 助けてくれないかな?


 私を十環先輩の前から
 連れ去ってくれないかな……


 柄にもなく
 童話のお姫様みたいなことを
 思ってしまった。


 その時
 ダダダダと階段を駆け上る音がして
 ふと視線をあげる。


 ん? 

 うさぎ?

 
 目の前には
 童話に出てくる凛々しい王子様とは
 言えないくらい
 なよっとしたウサギが立っていた。
< 33 / 209 >

この作品をシェア

pagetop