白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
「桃ちゃん、俺、そろそろ帰るね。
あ、その前に1枚だけ写真を撮らせてよ。
お姫様みたいにかわいい、桃ちゃんをさ」
お姫様みたいにかわいいか…………
なんでだろう。
十環先輩にそんなこと言われたら
前の私ならキュンって倒れるほど
喜んだはずなのに。
私だけに向けてくれる
この贅沢な微笑みを
今は見たくないなって思ってしまう。
誰か……
助けてくれないかな?
私を十環先輩の前から
連れ去ってくれないかな……
柄にもなく
童話のお姫様みたいなことを
思ってしまった。
その時
ダダダダと階段を駆け上る音がして
ふと視線をあげる。
ん?
うさぎ?
目の前には
童話に出てくる凛々しい王子様とは
言えないくらい
なよっとしたウサギが立っていた。