白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)

 お昼を過ぎたころから
 少しお客さんが落ち着いた店内。


 俺が神経を研ぎ澄ませれば
 離れたところにいる
 桃ちゃんとウサギのトイくんの会話が
 簡単に耳に入ってくる。


「桃華さん、これ」


「何?」


「……バレンタインです」


 雪みたいに真っ白な肌のトイくんの頬が
 ピンクに染まりだした。


 わかりやすいな。

 トイくんって
 桃ちゃんのことが大好きじゃん。


 そのことに桃ちゃんが
 気づいているかどうかはわからない。


 でも
 桃ちゃん家族はみんな
 気づいているようだ。
 トイくんが
 桃ちゃんに恋しているって。


「っていうかさ、
 トイプーにもらう理由なんて
 ないんだけど」


「ありますよ。
 だってこの前、言ってたじゃないですか。
 スルメは食べ飽きたって」


 うつむきながら
 一生懸命言葉をつなぐトイくん。


 桃ちゃんに好かれようと必死なところが
 かわいいと思ってしまう。


 俺にもあるから。

 結愛さんに自分の思いを伝えたくて。
 でも断られるのも怖くて。
 モジモジしちゃったことが。


 桃ちゃんはどうするんだろう。

 受け取るのかな? 
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