白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)

 
「それで?
 トイプーは私に何をくれるわけ?」


「……クッキー……ですけど」


「トイプーの手作り?」


「僕にお菓子作りなんて無理ですよ」


「手作りじゃないなら
 もらってあげてもいいけど」


「どういう意味ですか?」


「え?そのままの意味じゃん。
 買ったものならもらってあげる」


「なんで? 
 僕の手作りだったら
 受け取らないってことですか?」


「うん。
 だってさ、毒とか入れられてそうだし。
 トイプーって私に
 恨み、ありありでしょ?」


「へ?」


 恨みという言葉に反応したトイくん。


「だって、たまに思うからさ。
 トイが私と出会わなかったら
 トイはもっと普通の中学校生活を
 送ってたんだろうなって?

 悪かったな。 
 あの時
 ヤンキーの道に引きずり込んじゃってさ」


 桃ちゃんの口から
 『悪かった』という言葉が出たことに
 俺は固まってしまうほど驚いた。


 でも俺以上に
 言われた本人の方が
 石みたいにカチコチに固まっている。


 石になったトイくんを溶かすかのように
 桃ちゃんが優しい言葉を
 トイくんに浴びせた。


「バレンタインだから、特別に言うからな。
 これは私からの感謝だから。
 1回しか言わないからな」


「え?」


「トイ…… 
 私さ、トイにしか情けない自分を
 さらけ出せないっていうか……
 弱さを見せられないっていうか……

 だから、ありがとな。 
 いつもそばにいてくれて」


 嬉しさが込みあがるように
 とびきりの笑顔を見せたトイくん。


 それとは反対に
 なぜか今の桃ちゃんの言葉を耳にして
 俺の心が
 締め付けられるように苦しくなった。


 桃ちゃんのあんな顔
 俺、見たことないのに。


 そんな子供みたいなことを
 思ってしまった自分に
 自分が一番驚いた。


 何、この感情?

 なんでモヤモヤしてるわけ?


 桃ちゃんとトイくんの会話が
 どんどん俺の心の中を濁らせている。

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