白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)

 なんで?


 俺、高1の時から
 結愛さんのことが大好きで。

 別れた今でも
 ずっと俺の心の中の一番真ん中に
 いるはずなのに。


 なんで桃ちゃんのことが……
 気になるんだろう……

 トイくんにバレンタインを渡さないでと
 思っちゃったんだろう……


 その時
 桃ちゃんのお母さんが
 俺に声をかけてきた。


「十環くん、疲れたでしょ?
 桃と一緒に、お昼休憩に行ってきて。
 お昼は桃に
 十環くんの分も用意させるから」


 桃ちゃんと二人で、お昼休憩?


 桃ちゃんへの理解不能の感情の中
 俺、二人っきりになって大丈夫かな?


 そんな不安そうな表情がばれたのか、
 桃ちゃんのお母さんが
 顔を覗き込んできた。


「十環くん大丈夫?
 朝より、げっそりしてる気がするけど。
 疲れちゃった?」


「あ……いえ。大丈夫です」


 自分の感情をごまかすように
 笑顔を作ると
 桃ちゃんのお母さんは
 桃ちゃんに手招きをした。


「お母さん、何?」


「桃、十環くんのお昼も
 用意してあげてね」


「ちょ……ちょっと。
 お母さんが作ってあげてよ」


「それはムリよ。 
 予約のお客さんがもうすぐ来るから。

 十環くん、ちょっとお疲れみたいだし。
 親子丼でも作ってあげれば。
 桃も親子丼なら
 確実に美味しく作れるでしょ」


「頼んだわよ」と言い残し
 桃ちゃんのお母さんは
 俺たちの前から去っていった。

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