白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
次の日。
朝5時。
今日も朝が……
やってきてしまった
優しいお父さんやお母さんに
育てらている女子高生は、
あったかい布団の中で
ぬくぬく寝ているんだろうな。
諦めモードで布団から出ると
ジャージに着替え
ウインドブレーカーを羽織る。
髪なんて櫛でとかしもせず
寝癖がついたまま
とりあえず一つ縛り。
そして階段を下り
玄関に向かった。
「桃、お前遅すぎなんだよ」
「遅くないよ。
虎兄(とらにい)がお年寄りみたいに
早起きなだけじゃん」
私を睨みつけながら
チッと舌打ちをしたこの人。
虎太郎こと虎兄(とらにい)。
私より2歳上で高3の兄。
我が家には決まりごとがいくつもある。
その中の一つがこれ。
『高校を卒業するまで
5時起きで朝練』
学校がある平日だろうが
土日だろうが
強制的にやらされている。
その理由が、家訓その1
『自分の身は自分で守る』
物心つくころから、朝5時に起こされて
父の道場で
ありとあらゆる武術や格闘技の修行を
させられてきた。
そんな父に昨日
『俺、明日の朝練に顔出せないから
10キロ走れよ』と言われたため
今から体が凍えそうな寒さの中を
虎兄とランニングなんです。
「おい、桃!
シューズ履くのに
どんだけかかってんだよ。
早くしないと置いてくからな」
「待ってよ。
お父さんに言われてるじゃん。
二人で一緒に走れって」
もう!!
虎兄なんて本当に大嫌い!!
いつも上から目線で
文句ばっかり言ってきてさ!!
そして虎兄以外に
あと2人も兄がいるけど。
顔も見たくないくらい大嫌い。
六花はいいなぁ……
甘えさせてくれる
お兄ちゃん兼、彼氏がいてさ……
虎兄の後を
必死にくっついて走りながら、
親友と自分の兄を比べて
私はため息ばかりついていた。