白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
「十環先輩って……
好きな子がいるんですか?」
「へ?」
なんてことを
聞いちゃったんだろう……私……
私の突拍子もない質問に
食べていた親子丼が
変なところに入っちゃったのか
あわてて水を飲む十環先輩。
そして落ち着いたころ
いつもの笑顔を私に向けた。
「いるよ。 好きな子」
「へぇ……」
好きな子がいるんだろうなとは
思っていた。
十環先輩は
いろんな子に告白されているのに
全部断っているみたいだし。
でも、十環先輩からはっきり
『好きな子がいる』と聞いたとたん
深い悲しみの感情が
一気に込み上げてきた。
バカだ私。
なんで今
そんなことを聞いちゃったんだろう。
自分のことをバカだと思ったはずなのに。
傷つくってわかっているのに。
私の口は塞がってくれない。
「どんな人なんですか?
十環先輩の好きな人って」
「そうだな。
いつも笑顔で、みんなに優しい人。
しっかりしているのに
ほんわかしている部分もあって
守ってあげたいなって思える人かな」
昨日、バレンタインを
十環先輩に渡そうとして失敗したときに
答えていたことと同じだ。
十環先輩の好きなタイプは、
そのまま
十環先輩の大好きな人のことだったんだ。
私なんて、十環先輩の彼女候補にすら
ノミネートされないって
わかっていたはずなのに。
自分と正反対の女の子が
好きとわかったとたん
押しつぶされるように胸が苦しくなった。
でも、目の前の十環先輩は
私なんかよりも苦しそうな表情を
浮かべている。
「俺さ、その子にフラれているから。
2年前に」
「え?」