白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)


「結愛(ゆあ)さんっていうんだけど
 俺より2歳上でね。
 明虹学園の生徒会長だったんだ。
 
 もう2年も経つのに
 まだ引きずっているって
 俺ってヤバい奴でしょ?」


 なんで悲しいことを、笑顔で言うの?

 十環先輩、
 本当は苦しくて
 しょうがないんじゃないの?


 十環先輩が笑えば笑うほど
 痛々しく見えてしまう。


 なんかその姿が、自分と重なった。

 辛いとき、辛いって周りに言えなくて
 平気なふりをしてしまう自分。


 結構辛いんだよな。
 自分の気持ちを
 外に吐き出せないのって。


「でも、結愛さんのことは忘れなきゃ」


「え?」


「だってね、
 もうすぐ結婚しちゃうんだ。結愛さん」


 ほら。
 そこ笑って言うところじゃないからね。

 『結婚なんかしないで欲しい』って
 自分の苦しみを
 吐き出すところだからね。


 心の苦しみを
 必死に笑顔でごまかしている十環先輩。


 楽にしてあげたいな。
 心から笑ってほしいな。


 そう思った時には
 とんでもないことを口にしていた。


「十環先輩、
 私を『仮の彼女』にしませんか?」


「え?」
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