白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
「これはお礼です」
「お礼って?」
「六花(りっか)のことで
十環先輩にはいろいろ相談に
のってもらったから。
その時の、お礼。
それと……
卒業しちゃう前に
十環先輩ともう少し話してみたいかな」
最後にちょっとだけ
自分の気持ちを伝えてみた。
でも、私が十環先輩のことを
好きって思いは
全く伝わってないみたいだけど。
その時
アハハと笑う十環先輩の声が聞こえた。
「先輩?」
「もう、桃ちゃん。
本当に龍牙さんにそっくり」
「え? 龍兄と私が?
どこが似ているんですか?」
「だって桃ちゃん
『恩は絶対に返すタイプ』でしょ?
龍牙さんも、そういうところ
きちんとしているしさ。
それに龍牙さんって
俺が助けて欲しいときは
自分を犠牲にしてでも
助けてくれるんだよね。
りっちゃんが苦しんでいた時に
何とかしなきゃって必死だった
桃ちゃんを見て、
そんなところも
龍牙さんに似ているなって思ったよ」
「そんなこと……ないです」
私はそんな
優しいタイプじゃない。
十環先輩の仮の彼女を
やるって言ったのだって、
少しでも十環先輩と
一緒にいたいからだし。
「俺のことを思って
仮の彼女をやってくれるって
言ってくれたことは嬉しいよ。
ありがとう。
でも……
桃ちゃん
俺の前で素の自分を隠しているでしょ?」
「え?」
「だって明らかに違うから。
中学のお仲間さんやトイくんへの態度と
俺への態度がさ」
そ……そりゃそうだよ。
大好きな人に……
あんなきつい態度なんてとれないよ。
「ガッカリしました?
私があいつらに
女王様みたいな態度とっていて」
「ガッカリというか……
なんかショックだったっていうか」
ショックかぁ……
そうだよね……
仲間というか下僕たちに
上から目線でグチグチいう私なんか
悪魔にしか見えないよね。
もう、十環先輩に
関わらないほうがいいのかもしれない。
仮の彼女として隣にいたら
どんどん自分の嫌な部分が
ばれていってしまう。
そして、完全に嫌われるんだろうな。
大好きな十環先輩に。
「十環先輩、さっきの話
聞かなかったことにしてください」
「え?」
「十環先輩の仮の彼女の件です。
よくよく考えたら十環先輩に
迷惑をかけるだけだし。
十環先輩も、嫌ですよね?」
「え? ちょっと待って……
勘違いさせちゃった?
え……と……」
いきなり心配そうな表情で
あたふたし始めた十環先輩。
私の瞳をまっすぐ見つめ
真剣な顔で口を開いた。
「ショックって言ったのは
桃ちゃんのお仲間さんたちへの態度が
嫌とかじゃなくて……
むしろ……逆……かも……」
逆?
どういう意味?