白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
「ただいま」
やっと走り切ったよ。
10キロ。
玄関で靴を脱ぐ虎兄は
私に不満ありありな顔。
「何よ?」
「桃さ、もっと早く走れよ」
「ムリに決まってんじゃん。
私、虎兄より2歳も下だよ。
女の子だよ」
「は?
お前なんて、女でもなんでもねえし」
朝練の後はいつもこんな感じ。
上から目線で文句たらたらな虎兄に
私はキャンキャン吠えまくる。
虎兄と言い合いしながら
朝ごはんのため
キッチンのドアを開けると……
「桃ちゃん、虎ちゃん、おはよう。
朝練、お疲れさま」
ダイニングテーブルの前に腰かけ
ニコニコ笑顔のお母さんが
声をかけてきた。
その笑顔に
ゾクゾクッと寒気が……
おかしい!! おかしい!!
だっていつもなら
『虎! 桃!
朝から言い合いしてんじゃないよ!
静かに朝ごはん食べな!』
って
鬼みたいに目を吊り上げて
怒鳴り散らすのに……
10キロ走って
体の芯からポカポカだった。
でも
気持ち悪いくらい優しいお母さんが
怖すぎて、
寒気でつま先から頭のてっぺんまで
震えあがった。
そんな時、一番上の兄
龍牙こと龍兄(りゅうにい)が
こちらも気持ち悪い笑顔で
話しかけてきた。