白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
目を吊り上げている女子たちを引き連れ
なぜか十環先輩が
私の教室のドアに手をついていた。
隠れたい!
なぜか、嫌な予感しかしないし!
そう思ったのに。
私がしゃがみ込もうとする前に
教室中に響く十環先輩の声が
私の耳にはっきりと届いた。
「桃ちゃん!」
ニコニコ笑顔の十環先輩は
周りなんて気にせず
窓際の私のところまで
一直線に歩いてきている。
私はため息しか出てこない。
だって。
教室までついてきた
十環先輩ファンの女子が明らかに
私を睨みつけているから。
「十環先輩……
どうしたんですか?」
「え?
俺が桃ちゃんの教室まで会いに来たのに
嬉しくないの?」
仮の彼女に向かって
なんじゃその質問は?
嬉しいか嬉しくないかと聞かれたら
そりゃ、本物の恋人同士っぽくて
嬉しいけど。
でも
私を呪い殺しそうな数多の瞳が
私に突き刺さっているんですけど。
私は先輩の質問を無視して
聞き返した。
「だから、何しに来たんですか?
十環先輩は」
「桃ちゃんと一緒に
お昼たべようと思って」
王子様級の笑顔を向けられ
『かっこよすぎです』と
本音を漏らしそうになったけど
我慢、我慢。
「お昼は、六花と食べるので」
鋭い視線の数々が気になって
不愛想に答えちゃった。
あ~ もう。
今ので十環先輩に嫌われちゃうかも。
そんな私の心配をよそに
相変わらず笑顔で
マイペースな十環先輩。
今度は、六花を見つけて話しだした。
「あ、りっちゃん。
じゃあさ、りっちゃんも一緒に
お昼食べようよ。
一颯とのラブラブ話も聞きたいし」
その時
私を呪い殺そうと眼を吊り上げている
集団から、声がした。
「十環くん
今までお昼は
私たちと食べてくれてたじゃん。
なんで今日からダメなの?」
そうだよ! そうだよ!と
女子たちの大合唱。
「それは、付き合っているからだよ。
桃ちゃんと」
「ええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
十環先輩ファンの女の子たちの
叫び声が響き渡っている。
私も叫びたかったもん。
なんで、暴露しちゃうかなって!
(本当は、仮の彼女だけど)