白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
十環先輩に連れてこられたのは、講堂。
全校集会や、行事の時以外
入ることができない場所。
「入っても大丈夫なんですか?」
「うん、全然問題ないよ。
学園長に許可貰っているから」
あの美魔女学園長が
特別に許可をしてくれるなんて
信じられない。
でも目の前の十環先輩は
ポケットから鍵を取り出し
ガチャリと講堂のドアに刺した。
「さ、桃ちゃん。入って」
とりあえずコクリと頷き
先を歩く十環先輩の後に続く。
講堂の真ん中あたりまで来ると
十環先輩は畳2枚分くらいありそうな
レジャーシートを広げた。
「桃ちゃん、座って。
今日はここでお昼を食べよ」
「なんで、ここなんですか?」
「ここはね、俺が高校に入って
初めて結愛さんを見た場所だから」
ステージの方を
悲しそうな瞳で見つめる十環先輩。
私の隣にいる王子さまは
きっと今
お姫様との出会いを思い出している。
王子様の心の中に
私の居場所なんて
これぽっちもないんだろうなと思ったら
切なさが襲ってきた。
2人の間に流れた涙色の空気を
振り払うように
「早く、お昼たべようね」と
優しく微笑んでくれた十環先輩。
その微笑みが痛々しくて
私の胸がさらに締め付けられた。