白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)

「十環先輩のお弁当、おいしそうですね」 


「あ、これね。 
 母さん、料理上手だから。
 桃ちゃんのは……豪快なお弁当だね」


 十環先輩の言葉に
 体中から込み上げてくる恥ずかしさ。


 だって
 カラフルなおかずがいろいろ詰まった
 先輩のお弁当とは正反対に
 私のお弁当は半分茶色で半分真っ白。
 プラスちょっとだけ赤。


 唐揚げドーン。 
 生姜焼きドーン。
 白いご飯の上に
 梅干しが乗っかっている。


 このお弁当を見たら
 みんな思うはず。
 『男子のお弁当だ』って。


「これでも
 今日は当たりの日ですから」


 私の言葉に、首を傾げた十環先輩。


「お弁当に
 当たりとかあるの?」


「ありますよ。 
 今日は、龍兄がお弁当を
 作ってくれたので、当たりの日です。

 龍兄は『冷凍食品は使わない』って
 こだわりがあって。
 品数は少ないけど
 朝から唐揚げを揚げたりしてくれるから」


「ハズレもあるってことだよね」


「恋兄が作るお弁当は……微妙。
 お弁当はアートだと思っているみたいで
 味より見た目重視なので。

 この前なんて、白いご飯の上に
 カラフルなチョコが乗っかっていました。

 カラフルドットみたいで
 かわいかったでしょ?って
 恋兄に言われて
 つい回し蹴りしちゃいましたけど」


「アハハ。
 見てみたいな、恋都さんの作るお弁当」


「見るだけじゃなく
 食べてみてくださいよ。
 サンドイッチの中に
 グミが入っていたりしますからね」


「食べるのは、遠慮しておくかな」


 アハハと声を出して笑う
 十環先輩を見ると
 ちょっと安心する。


 今は結愛さんのことを忘れて
 心から笑ってくれている気がするから。
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