白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
笑い声が消えた瞬間
また一点を見つめ出した十環先輩。
視線の先は
結愛さんを高校で初めて見たと
言っていたステージ。
私が隣にいても
大好きな結愛さんのことを
思い出しちゃうよね。
自分の存在の小ささに、ため息がでる。
そしてため息と一緒に
私の思いも吐き出してしまった。
「生徒会長なんて、すごいですね」
「え?」
「結愛さんです。
今の生徒会長みたいに
あのステージの上で
生徒全員の前で話したり
していたってことですよね。
私にはできないな」
「桃ちゃんだってすごいじゃん。
中学の時、学校中を束ねる
番長だったんでしょ?」
十環先輩の口から『番長』という
できれば抹消したいような過去を
手繰り寄せるキーワードが出てきて
一気の恥ずかしさが込み上げてきた。
「中学で番長をしていたことは
私の黒歴史ですから……」
「すごいと思うけどな。
俺には番長になる度胸なんてないしさ」
「好きで番長になったわけじゃないから。
中学に入る前は
これでもケンカとかヤンキーに無縁の
小学生だったんですよ」
「じゃあなんで、番長になったの?」
「それは……」
十環先輩に私の過去を話したら
どんどん嫌われそうな気がする。
それだけ酷い日常だったから。
中学時代は。
でも
隣で優しく微笑む十環先輩を見ると
思ってしまう。
この人に受け入れてもらえたら
嬉しいな。
私の過去も。今も。