白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
「なんで……女王様なの?」
「え?」
「中学の時のお仲間さんには、なんで
あんな女王様になっちゃうの?
俺の前では違うでしょ?」
女王様か。
まだいい例えかも。
実際なんて
手下をこき使う魔王並みに
ひどい扱いをしちゃってるからな。
どんどん十環先輩に
嫌われていくのがわかる。
でも、今更隠してもしょうがない。
私は素直に
自分の思いを口にした。
「中2で番長になってからは
必死でした。
みんなに慕われていた
虎兄みたいにならなきゃなとか。
他の中学の人たちが襲って来たら
みんなを守んなきゃとか。
いきなり背負わされたものが大きくて。
なめられたくなくて、頼られたくて。
絶対に仲間は守り抜きたくて。
でも、家に帰って虎兄を見ると
虎兄みたいに精神的にも強くない自分が
許せなくて。
弱みを誰かに打ち明けたいのに
誰にも寄りかかれなくて。
そんな葛藤を抱えた日々のなか
たどり着いたのが、女王様の自分。
あいつらと一番いい関係でいられるし
女王様でいると自分も楽で。
だから今でも
あいつらにはドSさく裂に
なっちゃうんです」
「そっか。
桃ちゃんなりに行きついての
女王様だったんだね」
「軽蔑しますか? 私のこと」
「しないよ。
それにいいと思うし。
中学のお仲間さんと話している時の
桃ちゃんってさ
なんか生き生きして見えるって言うか
カッコいいと思うよ。
でも……
なんか嫌だなって思う時もあって……」
「そうですよね。
人としてどうなんだ!って
感じですもんね。私」
「そういうことじゃなくて……
俺にも……
そういう桃ちゃんを見せて欲しい……」
「え?」
「だって桃ちゃん
今は俺の彼女かっこ仮でしょ?」
そう言ってニコッと微笑んだ十環先輩。
その笑顔が朝日に輝く湖のように
キラキラしていて
見つめたまま
目が離せなくなってしまった。
ん?
でも十環先輩。
様子がちょっと変。
キャラメル色のサラサラ髪の王子さまは
なぜか
顔じゅうが真っ赤に染まっていた。