白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
「こんな唐揚げ
十環先輩には食べさせられません」
「でも、中学のお仲間さんには
食べさせるんでしょ?」
「あいつらは、自分から来るので。
『タバスコどっぷりかけて
食べさせてください』って」
「じゃあさ、トイくんも喜んで食べる?
こんな辛い唐揚げ」
「トイかぁ」
何かを思い出したかのように
桃ちゃんはフフと鼻で笑った。
「トイなら喜んで食べますよ。
その後、『辛すぎです』って
泣きながら抱き着いてきますけど」
泣きながら抱き着いてくる?
トイくんが桃ちゃんに
抱き着いているところを想像するだけで
なんかムカつく。
それに桃ちゃんも
トイくんを思い出しながら
嬉しそうに笑っているし。
このイライラが
自分じゃコントロールできなくて
俺の体が勝手に動いた。
「桃ちゃん、唐揚げもらうね」
俺は桃ちゃんのお弁当箱から
唐揚げを一つ貰うと
タバスコをこれでもかというほど
振りかけた。
「十環先輩、もしかしてその唐揚げ
私に食べさせる気じゃ?」
桃ちゃんの声を無視して
俺は自分の口の中に
唐揚げを放り込んだ。
か……
辛すぎる……
ゲホゲホと咳きこみながら
水で何とか唐揚げを流し込んだ。
「十環先輩、大丈夫ですか?」
心配そうに俺を覗き込む瞳に向かって
悪魔スマイルを浮かべた俺。
「桃ちゃん、これでいいよね?」
「え?
いいって、どういうことですか?」
「だから、こういうこと」
『何?』って首をかしげる桃ちゃんを
俺は横から包み込んだ。